新NISA「2年目の罠」。始めた人必見の安定した資産運用のための見直し術

投資
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2024年から鳴り物入りで始まった新NISA。多くの人が「今度こそ資産形成を」と意気込んでスタートしたはずである。

あれから約2年。2025年後半の今、運用状況はどうなっているだろうか。

「最初の1年は順調だったが、最近の市場変動で含み損が出て怖い」 「毎月の積立がだんだん負担になってきた(=積立疲れ)」 「つみたて投資枠は設定したが、成長投資枠は手つかずのままだ」

もし一つでも当てはまるなら、それは危険な「2年目の罠」に陥っている兆候かもしれない。

新NISAは「始めたら終わり」の魔法の杖ではない。むしろ、2年目こそが、将来の資産額を左右する最も重要な分岐点となるのである。

ここでは多くの人が陥りがちな新NISA「2年目の罠」の正体と、今すぐ実践すべき具体的な見直し術を解説する。

なぜ今「2年目の見直し」が必要なのか?

順調に積立を続けている人ほど、「設定は変えない方がいい」と考えがちである。しかし、2025年後半の今だからこそ見直しが必要な理由は明確だ。

それは、多くの人が「感情」と「環境の変化」という2つの壁にぶつかる時期だからである。

市場は常に変動する。最初の1年が好調だったとしても、必ず調整局面(株価が下落する時期)は訪れる。その時、「本当にこのまま続けて大丈夫か?」という不安(感情)が生まれる。

また、昇進や転職、家族構成の変化によって、当初設定した積立額が「無理のある金額」になっていたり、逆に「もっと投資できる状態」になっていたり(環境の変化)もする。

この「2年目の分岐点」で、感情に任せて積立をやめたり、環境の変化を無視して非効率な放置を続けたりすることが、将来の大きな損失につながるのだ。

専門家が警鐘! 多くの人が陥る「3つの罠」

ここで、筆者の知人で資産形成の専門家であるファイナンシャル・プランナー(FP)のA氏は2年目の投資家が直面するリスクについて、次のように指摘する。

「新NISAで最も危険なのは、短期的な市場の動きを見て『狼狽売り』をすること、そして『積立疲れ』で投資自体をやめてしまうことです。2年目は、投資の『目的』を再確認し、機械的にメンテナンスを行う絶好のタイミングなのです。」

A氏の指摘も踏まえ、私たちが陥りがちな「3つの罠」を具体的に見ていく。

市場下落による「積立停止」の罠

最も多い失敗例である。株価が下落し、含み損(マイナス)が出ると、人は「これ以上損をしたくない」という恐怖から積立を停止し、最悪の場合、売却してしまう。

しかし、長期の積立投資において、下落局面は「安く買うチャンス」に他ならない。ここで積立を停止することは、将来の利益の芽を自ら摘み取る行為である。

「成長投資枠」の完全放置

「つみたて投資枠でオルカン(オール・カントリー)だけ設定して、あとは放置」というケースは非常に多い。それは決して間違いではないが、最適解でもない可能性がある。

非課税枠が年間360万円(生涯1,800万円)に拡大した新NISAの真価は、成長投資枠の戦略的活用にある。

「つみたて投資枠で安定的なコア(核)を作り、成長投資枠で積極的なサテライト(衛星)投資を行う」といった資産配分(ポートフォリオ)を組むことで、資産成長のスピードを加速できる可能性がある。投資に少し慣れてきた2年目こそ、成長投資枠の活用を検討すべき時だ。

無理な積立による「積立疲れ」

新NISA開始時の高揚感から、毎月の積立額を無理して高く設定してしまったケースである。

「毎月の支出がキツい」 「ボーナス払いを設定したが、今年のボーナスは期待できそうにない」

投資は「余裕資金」で行うのが大原則。生活を切り詰めてまで行う積立は長続きしない。積立投資は「継続」こそが命である。

今すぐ実践! 新NISA「2年目の見直し」具体3ステップ

では、具体的に何をすべきか。以下の3ステップで、自身の新NISAを点検・最適化することを推奨する。

ステップ1:「目的」と「ゴール」を再確認する

まず、「何のために」投資をしているのかを再定義する必要がある。

  • 「20年後に老後資金として3,000万円」
  • 「10年後に子供の教育費として500万円」
  • 「漠然とした将来不安の解消」

目的が明確であれば、市場が一時的に下落しても「20年後のためだ」と動揺しなくなる。もし目的が曖昧だったなら、この機会に「いつまでに、いくら」必要なのかを具体的に設定し直すべきである。

ステップ2:現在の「資産配分(ポートフォリオ)」をチェックする

次に、今保有している金融商品のバランスを確認する。

チェック項目良い例見直し候補例
リスク許容度株式(高リスク)と債券(低リスク)のバランスが取れている保有商品がすべて「米国株(S&P500)」など特定地域に偏っている
成長投資枠成長投資枠で「高配当株ファンド」を追加し、インカムゲインも狙う成長投資枠が0円のまま。非課税枠を活かしきれていない
コスト信託報酬(手数料)が低いインデックスファンドが中心過去に購入した信託報酬の高いアクティブファンドの保有継続

もし「リスクを取りすぎている」と感じるなら、つみたて投資枠の一部を債券バランスファンドに変更するなど、調整を検討する。

ステップ3:「積立金額」と「継続性」を見直す

最後に、毎月の積立額が「持続可能」かどうかを再評価する。

  • 積立がキツい場合:迷わず「減額」すべきである。月5,000円でも、続けないより遥かに良い。ボーナス設定の解除も選択肢だ。
  • 余裕が出てきた場合: 「増額」を検討する。特に賞与(ボーナス)時など、余裕資金で成長投資枠を一括購入するのも賢い使い方である。

重要なのは、ストレスなく「忘れていられる」金額に設定することだ。

まとめ:「始めた人」から「育てる人」へ

新NISAを始めた時点で、すでに大きな一歩を踏み出している。しかし、本当の勝負はこれからである。

2025年後半の今、多くの人が直面する「2年目の罠」は、決して他人事ではない。市場の変動に怯えたり、積立疲れでやめてしまったりするのは、あまりにもったいない。

新NISAは、一度設定したら放置して良い「貯金箱」ではなく、ライフステージや市場環境に合わせて調整していく「生きた資産」である。

この記事を読み終えたら、まずは10分、自身の証券口座にログインし、「目的」「資産配分」「積立額」の3点を見直してほしい。

「始めた人」から「賢く育てる人」へ。その小さな一歩が、10年後、20年後の資産に決定的な差を生むはずである。

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